離職の連鎖が起きる悪循環と解決策

日本において、看護師は慢性的な人材不足に陥っている。この問題は、一人ひとりが激務になって、医療の質が落ちるうえ、現場全体を疲弊させる悪循環を引き起こしてしまう要因ともなり得る。というのも、人材不足が続けば、残された看護師一人ひとりの業務量は、おのずと増大するものだ。過重労働と疲労の蓄積は、各々の心のゆとりを奪い、結果として職場の雰囲気悪化を招いてしまう。小さなミスが増えたり、感謝の言葉やコミュニケーションが減ったりすることで、人間関係にも軋轢が生じやすくなる。このような状況が続くと、「もうここでは働けない」と感じる人が増え、さらなる離職につながってしまうのだ。そして、また人員が減ることで、残った看護師の負担がさらに増えるという、負のスパイラルが完成してしまう。

この悪循環を断ち切るためには、新たな人材確保と同時に、今いる看護師の負担を減らす抜本的な対策が不可欠だ。その有効な手段の一つが、ICT化の推進である。電子カルテの導入はもちろん、スマホやタブレットを活用した情報共有、AIによるデータ分析など、最新のテクノロジーを駆使し、看護記録や事務作業といった間接業務の時間を大幅に削減するのだ。これにより、看護師が本来の仕事である患者ケアに集中できる時間を増やすことが可能となる。

テクノロジーを活用した業務効率化は、看護師の疲労を軽減し、職場の雰囲気を改善する後押しにもなるだろう。ICT化は、単なる業務ツールの導入ではなく、看護師の働き方や心の余裕、ひいては医療の質そのものを改善する重要な投資といっても過言ではないのだ。